ADS-B用アンテナをさらに改修した話

レーダー
©いらすとや.

この記事の話は昨年末にADS-Bの受信機セットが壊れて以降の長期間にアンテナ関係で行ったことが時系列マゼマゼで書かれています。

謎の針金アンテナを作り直しと再設置
以前作った針金アンテナの記事の写真。
スタブの部分が少し広く、そしてそのスタブ部分を直接グラスファイバーのポールに留める方式にしていた。これでもまぁまぁ受信できていたのだが、なんか気に入らなかったのも確か。今回アンテナケーブルを変更するついでにアンテナ自体も作り直すことにした。ただし、基本的には「針金4箇所曲げるだけの高利得な謎アンテナを作る」のダブルツェップアンテナと同じもの。

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回収した針金アンテナのスタブの幅。アンテナの計算ではスタブの間隔は8mmということになっていたのでどうするか迷ったあげくこの時は間隔そのものを8mmで作った。この針金は直径3mmなので針金の中心からだと間隔が11mmということになる。

謎の針金アンテナを作り直しと再設置 2
前回も針金にアンテナケーブルを仮留めするのに使った圧着端子。給電点の位置を決めるのに圧着する側ではなく丸い穴(上の写真では中心より左下側に見えている穴)を針金に通して位置を探った。前回は最終的には圧着端子は使わずケーブルの端はハンダでアンテナ針金に直付けになった。
今回は圧着端子の圧着する側(上の写真では中心より右寄りの筒部分)を針金に通して位置を調整してからかしめることに。

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かしめる筒部分の穴の直径と針金の直径が近いものを選択したが案の定針金をスムーズに通ってくれないので切断した。また、アンテナケーブルと接続する部分は少し表面を削った。

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今回は針金の中心の長さでアンテナの設計どおりに作るということでスタブの間隔が変わる。つまり針金の直径が3mmなので針金と針金の間の幅は5mmになる。
針金を曲げる前に圧着端子を通しておいてスタブ部分にそれぞれ1つずつ圧着端子を配置した。圧着端子とアンテナケーブルを接続し、VNAでSWRの値を見ながら位置をずらして調整する。前も書いたが、最適位置を探すと位置はケーブルの芯線側と網線側でちょっとズレた状態になる。(1090MHzのSWRが1.0だとスミスチャートで1090MHzがちょうど中心の50Ωを通る曲線)

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写真では既に自己融着テープを巻いてしまっているが、芯線の先、網線の先をそれぞれ圧着端子にハンダ付けして自己融着テープを巻き、その上からビニールテープなどで養生する。自己融着テープもビニールテープも導電性はないということになっているが、芯線側と網線側を一緒には包まないようにした。

謎の針金アンテナを作り直しと再設置 6
この写真は今回修理を行った過程で撮影した再現用。
暫く前に、新しく作った針金アンテナを写真の赤い輪の部分にタイバンドを巻いて固定した状態で一度「完成」として屋根の上に設置したのだが、しばらくしてタイバンドが取られて壊されてしまった。聞いた話では、カラスが屋根に集まっていたらしいのでカラスにイタズラされたかな?

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壊れた状態を撮ったもの。光学望遠のないスマホで撮ったのでこれで等倍。アンテナを固定していた細めのタイバンドが無くなったのでアンテナが外れて立ってる筈のエレメントが倒れた状態に。これでも受信自体はできるけど無指向アンテナのハズが傘を横にしてさしているようなもので本来の性能は発揮できない。
金属製のマストとケーブルを留めていた細いタイバンドも取られていてアンテナケーブルがマストからだいぶ離れている。

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見た目は醜くてヤバいがエポキシパテでアンテナケーブルを固めた。パテとアンテナの針金は触れていない。マストとアンテナケーブルを留めるタイバンドは全て太いものに取り替えた。
ついでにグラスファイバーの2本の延長マストも長さを倍にしてアンテナの位置を少し高くした。

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細い単管のアンテナポールの先にグラスファイバー2本で継いで高さを稼いでいる。こうすれば上部が軽くなる。アンテナポールが金属製なのでグラスファイバーで遠くに離すことでアンテナへの影響を弱めようということもある。
アンテナマストの先端に取り付けられた針金アンテナは ┫ になっているが、上の写真だと背景に溶け込んでいて殆ど見えていない。(特にスマホ画面だと見えないかも)
一応、これで完成のつもり。

問題はカラスのイタズラが本当だとしたら、これで壊されないとは限らないのよね。昨年H2には全く問題無かったけど。

2021年8月7日追記:
カラスが数羽集まって針金アンテナを突きまくって騒いでいるらしい。曲がり始めているとも。アルミ棒が銀色で太陽光が当たってピカピカ光るからかしら?

昨年末まではアンテナからその直下60cm以内までRG58を使い、塩ビパイプに格納したBPF+LNA+RTL-SDRドングル+シングルボードコンピュータとそこから室内までLANケーブルと電源用としてのUSBケーブルを伸ばした。しかし、屋外の塩ビパイプに熱源を入れて稼働させるとどうしても結露と湯気が発生して基板類がサビてしまう。 そこで、「アンテナ直下に機器類を置いてアンテナケーブルによる信号ロスを避ける」というのは諦めてアンテナから室内まで4〜5m長のアンテナケーブルを伸ばすことにした。ただし、針金アンテナから50cmほどのところでNコネクタでケーブルをつないでいる。いつかアンテナが壊れたり新しいアンテナを作ったらそこから先だけを取り替えるというつもり。また、バイアスTのLNAを購入したらそこに挟むというのもアリかもしれない。
で、安価なRG58ケーブルを幾つかAliExpressで購入したのだが、結構ヒドくて内1本に至っては3mのケーブルで信号がほぼ届かないほど。端子を取り替えたら直るかなと思って端子を外したら網線がボロボロボロボロ崩れたのが次々出てきてこれはダメだと思った。というか、RG58はさすがに1m以上は良くないかなと思ったのでもう少しだけマシそうなのを購入。今回アンテナケーブルには5D-FBを使用した。5Dなので太さ7.5mmで50Ω、家庭の衛星放送のアンテナケーブルに使われる5C-FBが75Ωで似たようなやつ。
FlightAwareのFAQを見ると「アンテナから受信機までのケーブルは、高品質の50オーム同軸ケーブルが15 m以下である必要があります(Ecoflex 10、Ecoflex 15、Westflex W103、H100、LDF250、LDF450、またはLMR600を推奨)」と書かれている。LMR400でも高くて手が出ないのにそれが推奨にすらなってなくてLMR600とかいう個人的には見たこともない直径15mmの太くて硬い高価なケーブルが推奨とかちょっとヒドい。でも、裸銅のソリッドケーブルだとケーブル曲げるのが大変な代わりに形作られたケーブルを変形させるのも大変なので今回のようなカラスに留めバンド取られて壊されるというようなのは無くなるかな?

謎の針金アンテナを作り直しと再設置 10
dump1090-faの5.0あたりから入っているウェブUIの新版SkyAwareによる昨日午後の様子。日中は100NM(海里)=185km以内で認識されることが殆どだったが、新しく作ったアンテナでは日中でも100NMを超えて遠くの航空機も捉えることが増えた。また、「がとらぼ」の中の人の環境では北西の若狭湾方向に限られるが夜も含めて180NM(330km)程度まで見えることが増えた。高度4万フィートくらいで巡航している旅客機だと海抜0mで周りに障害物が無いとして地球が丸い関係で見えるのは理論上では230NM(420km)が限度。高度2万4千フィート(7400m)の航空機だと計算上の最大距離は170NM(320km)ということになる。ADS-Bの1090MHzは光に近い特性で曲がったり大気中で反射したりしないためこれを超えるとなんかオカシイということになる。(ただし、稀に320NM=600km超えとかいうアヤシイのを検知することがあるけど)

以下2021年7月29日追記:

謎の600km超え 1
この画像はdump1090-faの出力する値をPrometheus + Grafanaで監視しているもの。(dump1090 Prometheus ExporterでADS-B受信状況を監視する参照)
頻発するわけではないけど、ときどき600kmを超える何かを検知しているというのが画像中の赤丸のように記録されている。このグラフは48時間分を表示しているので1瞬だけ飛び出たようなのは表示されず、数十秒〜数分検知されていなければこのようには表示されない。でも地球の丸さと航空機の高度を考えると600kmというのはありえない。何かの誤りやADS-Bの誤情報、エラー訂正の失敗だとは思うけど謎だった。

謎の600km超え 2
自衛隊F-15?と思われる航空機が能登半島の西、若狭湾の北方をうろついていたので眺めていたら、九州の宮崎県の海岸近くに突然ワープした。しかも暫くが2回。受信した値を間違えてエラー訂正してプロットしてるんだろうとは思うけど、こんなに変な風になるのね。しかも600km超えの時は毎回測ったように600km少しの同じ値なので毎回この場所(能登半島の西)に現れた航空機が間違って宮崎県沖に瞬間移動してるように検知してるのかな?