※このページの内容は1996年当時の内容となっています。(「がとらぼ」になる前の記事の修正分)
DTE速度だとかDCE速度だとかって何じゃらほいって思った人は読んで下さい。
DTE速度はPCとモデムの間の速度です。
簡単にいえばPCとモデムを繋ぐRS232ケーブル(片側方向)を通る時間あたりのデータ量です。
DCE速度はモデムとモデムの間の速度です。
これは自分のモデムから電話局を経由して相手のモデムまでの電話線(片側方向)の中を通る時間あたりのデータ量です。
図にすると下のようになります。
※ 図がなくなってしまいました。
DTE速度
DTEとはData Terminal Equipmentの略で日本語に訳すとデータ端末装置です。データ端末装置と言われると逆に何だかわからない気もしますが、要するにパソコンのことです。
DTEはパソコンのことですがDTE速度というとパソコンとモデムの間の速度です。
モデムとモデムの間はデータを圧縮して通信するので実はその最大速度よりも多くのデータを転送できます。例えばV.42bisという方式を採用する とモデムとモデムの間では最大で本来の400%(理論値)のデータを転送できます。よってPCとモデムの間はそれ以上の速度でデータを通信しなければモデ ムがサボる状態(通信時間が無駄)になる可能性があるわけです。
現在はテレホーダイなどを利用することで電話代を安価に抑えることが可能ですが、昔はそんなサービスはありませんでしたし、ましてや国際電話などは
ベラボーに高かったわけで1秒だって無駄にしたくなかったものです。通信開始時のネゴシエーション時間が長いとイライラしたり、できるだけ短い時間で1バ
イトでも多く転送したいと思って輸入モデムで出力を変更したり(違法)したものです。
私は貧乏人のインターネットと呼ばれたFidoNetやその亜流のネットワークに参加していましたが、国際電話代が月に15万円なんて時もあって請求書を見るのが怖い時期がありました。
UARTの最大速度
DTE速度を決定するにはPCのシリアルポートの制御チップ(UART)の最大速度とモデムの対応速度を知る必要があります。
大雑把に書くと一般的なPCに搭載されているUARTは8250と16450,16550と16550Aの3種類があります。最近はもっと高速なチップも存在しますが外付けカードに搭載されていることが多いので割愛します。
8250は1994年くらいまでの古いPCに搭載されている可能性が高いです。IBM互換機でいえばISAとかEISAバスの時代のパソコンです。まだシリアルポートがマザーボードにオンボードになってなくてシリアルカードというものを挿していた時代です。
速度は38400bpsまで対応していることになっていますが、その速度では動作が怪しい場合もあります。
16450と16550(初期型)はFIFOバッファが1バイトで57600bpsまで対応します。
16550Aは1990年代後半以降のPCに多く採用されているUARTです。
16ビットのFIFOバッファを持ち115200bps(115.2Kbps)まで対応します。
ISDN
回線のBチャンネル1本(64Kbps)で使用するなら16550Aが求められます。Bチャンネル2本(Multilink
Protocol接続で128Kbps)を使用する場合は16550AではそのDCE速度にも足りませんから高速チップを搭載した拡張カードを購入する必
要があるでしょう。(力不足だというのであって16550Aでは絶対にダメという意味ではない)
※ 16550の初期型にはバグがあって16450と実質的に変わりません。
※ 16550(A)は互換チップも多く刻印も怪しいので見た目ではどの型か判別できませんが大抵はOSが判断してくれます。
モデムのDTE対応速度
モデムの箱に誇らしげに書いてある速度は最大DCE速度ですのでモデムが対応できる最大DTE速度はマニュアルを見て確認して下さい。基本的には最大DCE速度の2倍か3倍がそのモデムの対応できる最大DTE速度です。
なぜ、2倍か3倍程度かというとモデムはDCEのデータを圧縮して流すのですが、その圧縮に使用される方式(MNP or V42bis)の最大圧縮率(理論値)がおよそ2倍から4倍となっているからです。なお、高速になるほど(時代が進むほど)転送するデータの圧縮が効きに くいものになった(テキストデータよりもJpeg画像や圧縮ファイルの転送が増えた)ためか高速モデムでは最大DCE速度の2倍が対応できる最大DTE速 度となることが多いようです。
大雑把に書くと下のようになります。機種によっては違う場合があるので確認して下さい。
モデムの分類とDCE速度 | 対応できる最大DTE速度 |
V.22モデム(1200/2400bps) | 4800/9600bps |
V.32モデム(4800/9600bps) | 19200bps |
V.32bisモデム(7200/12000/14400 bps) | 38400bps |
V.34モデム(2400-28800(33600)bps) | 57600bps |
K56flexモデム(28000-56000bps) | 115200bps |
V.90モデム(28000-56000bps) | 115200bps |
ISDNモデム(64Kbps) | 115200bps |
ISDNモデム(MP128Kbps) | 230400bps |
DCE速度
DCEはData Circuit Terminating Equipmentの略で日本語にすると回線終端装置でつまりモデムのことです。最初にも書きましたが、DCE速度はモデムとモデムの間の速度です。
モデムはそのデータ圧縮機能を利用することで一応最大DCE速度より速い速度で通信できることになっています。
ただし、アナログ回線はノイズに弱く、常に最大DCE速度で通信しているわけではありません。実際にアナログ電話回線上でV.34以上の高速モデムを利用した場合に最高DCE速度が出ることは稀です。
圧縮率もテキストなどの転送では比較的高いものの例えばJPEGファイルなど元々圧縮率の高いファイルでは全く圧縮されません。
V.22/V.32モデムの頃(パソコン通信が世間で話題になり始めた頃)はまだテキストデータの転送が多かったのでMNP5,V42.bis圧縮 により本当に速くなったと体感することができたのですが、V.34モデムの頃になると通信中にDCE速度が落ちてしまうことが多く(高速モデムでは通信中 に回線状態に応じてDCE速度が自動的に調整されます)、データ圧縮の恩恵もあまり得られなくなったので高速モデムを買った筈なのにあまり速く感じられな いと思うことが多かった記憶があります。(私はIDSN回線だったのでましな方だったかも)
ところで、市販されているK56flexやV.90モデムは受信側だけが速くなっています。
箱に誇らしげに書いてある56KbpsというDCE速度はその受信側の速度です。
実はK56flexモデムやV.90モデムの送信側の速度はV.34モデムと同じ28800(33600)bpsです。
よって市販されているK56flexモデム同士、V.90モデム同士で通信するとただのV.34モデムと同じとなります。ホスト局に設置されている業務用の対応モデムからデータを受信する場合のみ速い可能性があるというに過ぎません。
つまり、個人向けに市販されているK56flex/V.90モデムを使用してRASサーバを構築する場合は最大通信速度は28800(33600)bpsとなります。