Amlogicチップ搭載のTVボックスをCoreELECで最高のメディアプレーヤーにする インストール編

Amlogicチップ搭載のTVボックスをCoreELECで最高のメディアプレーヤーにする インストール編

CoreELECは、「Just enough OS」と呼ばれる軽量Linuxディストリビューションで、オープンソースのメディアプレイヤーKodiを基盤に開発されたプロジェクトです。主にAmlogic社製SoC(システムオンチップ)を搭載した低価格Android TVボックスやシングルボードコンピューター(SBC)を対象とし、Kodiの最新バージョンを最適化した環境を提供します。LibreELECのAmlogic特化フォークとしてスタートし、AmlogicのベンダーSDKを基にしたカスタムカーネルを採用することで、Androidの重いOSを排除した高速・安定動作を実現しています。2026年2月現在、最新版はCoreELEC 22.0-Piers_alpha2(Kodi 22 Alpha 2ベース)で、安定版は21.3-Omega(Kodi 21.3ベース)となっています。

対象デバイスは、Amlogic SoCの広範なラインナップに対応しています。古いS905(GXL)系から最新のS905X5、S928X、S6、S905X4-K、A311D2などまでサポート(CoreELEC 22ではS905X/GXL以前は非対応に移行)。具体的なメーカー・モデル例として、Ugoos(AM6/6B Plus/AM7/AM8/AM9/Proシリーズ)、Beelink(GT King/Pro、GS King X、GT mini A、GT1 mini 2など)、Odroid(N2/N2+、C4/C5、HC4)、Khadas(VIM1/3/3L/4、VIM1S)、Minix(Neo U22-XJ、U8K Ultra)、Banana Pi(M5、M2 Pro)、BuzzTV(X5、HD5、U5)、Homatics Box R 4K、RockTek G2、Nokia 8010、Radxa Zeroシリーズなど、公式wikiで数十機種がリストアップされています。インストールはSDカードやUSBにイメージを書き込み、デバイスツリー(dtb.img)を配置するだけで完了。多くの機種でAndroidとのデュアルブートや内部eMMCへのインストールも可能です。公式サポートはメーカー協力機種中心ですが、コミュニティのデバイスツリーで幅広い互換機種が動作します。

CoreELECを導入すると、本格的なホームシアターPC(HTPC)として活用できるようになります。Kodiをフルスクリーンで起動し、ローカルNASやUSBストレージの4K/8K動画をハードウェアデコードで滑らかに再生(対応フォーマット:H.264/H.265/VP9/AV1、Dolby Visionプロファイル対応機種多数)。ロスレスオーディオのパススルー(Dolby Atmos、DTS:X、TrueHD、DTS-HD MA)や3D再生、HDR10+、Blu-ray ISO直接再生もサポート。Add-on拡張でYouTube、Netflix、IPTV、PVR録画、ライブTV、音楽ライブラリ管理などが可能。CEC機能でTVリモコン一体型操作、Bluetooth/Wi-Fi/有線LAN対応、IRリモコンやFLIRC連携も容易です。Android版KodiよりCPU負荷が低く、起動が速く、画質・音質が向上。低消費電力でファンレス静音運用できるため、リビングルームの常時稼働メディアプレーヤーとして最適です。

プロジェクトの意義は非常に大きいです。数千円〜1万円程度の安価なAndroid TVボックスを、Apple TVやNVIDIA Shieldに匹敵する高性能メディアセンターに変身させることで、エンターテイメントの大衆化を実現しています。商用OSの広告・テレメトリー送信を排除し、オープンソース・プライバシー重視の環境を提供。Amlogicの最新チップ(AV1デコード、Wi-Fi6/Bluetooth5対応)を活用したハードウェアアクセラレーションの最適化は、コミュニティ開発者の貢献によるもので、古い機種の延命や新機能の早期実装を可能にします。結果として、ユーザーは高額機器を購入せずに4K HDRホームシアターを構築でき、開発者にとってはベンダーカーネル改善の場となります。2026年2月現在も活発に開発が進み、Kodiの次世代バージョン(Piers)への移行をリードしており、オープンソース文化と低価格ハードウェア活用の象徴的なプロジェクトとして、世界中のKodiファンに支持されています。要するに、CoreELECは「安くて高性能なKodi専用Linux」を目指した実用的なプロジェクトです。

前回(といっても昨年秋ですが)、X88Pro X5M TVボックスをAliExpressで購入しました。その際、必須条件として挙げたのが、Amlogic製のSoC、特にS9第6世代にあたるS905X5Mを搭載していることでした。
その理由は大きく2つあります。ひとつは、オープンソースのメディアOSであるCoreELECを利用するためには、Amlogic製SoCの搭載が事実上の前提条件となるためです。もうひとつは、Amlogicのラインアップの中でもS905X5Mが比較的高性能でありながら低消費電力で動作するバランスの取れたチップであることです。
また、今回のTVボックス購入の目的は、ネットテレビ番組を視聴することではありませんでした。あくまで音楽再生を中心としたメディアプレーヤーとして活用することが狙いです。そのため、購入当初からAndroidの標準機能を使うのではなく、CoreELECを導入して運用することを前提に機種選定を行いました。

AliExpress商品画像 12,053円 5,297円
(2025年10月30日 の参考価格)
2025年のブラックフライデー前月末にリンクを作成したため価格が高めに表示されているかもしれません。通常期あるいはセール時に割り引きを効かせると4GBメモリ32GBストレージのバリアントが5000円前後です。それより大幅に高い場合はセール直前などの価格釣り上げ期間である可能性があるので少し待つ方が良いでしょう。
この記事中でも触れていますが、SoCがAmlogic S905X5,S905X5Mであることが重要です。Amlogicのチップを積んだTV-Boxは多く販売されていますが、S905X5系以外は本当にパフォーマンスが低すぎて動作の遅さに不満を覚えることになります。

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CoreELECのWikiからGeneric Devicesのページhttps://wiki.coreelec.org/coreelec:devgeneric を開きます。2026年2月現在の最新バージョンはAmlogic-no向けのCoreELEC 22.0です。今回はS905X5M搭載のTVボックスを使用するため、S7Dファミリーに属するS905X5Mが対応リストに含まれていることを事前に確認します。

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TVボックスに付属するリモコンは、購入したショップやロット、購入時期によって異なる場合があります。購入した個体に付属していたのは、赤外線タイプのB21リモコンです。画像の右端に写っている、短く黒いタイプがそれにあたります。

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リモコンの設定ファイルを入手するため、https://github.com/CoreELEC/remotes/tree/master/AmRemoteの一覧と掲載されている写真を照合し、手元のリモコンと同一のものを探します。その結果、Homatics Box R 4K Plus用の設定が該当することがわかりました。該当フォルダ(ディレクトリ)内にあるremote.confをPCにダウンロードします。

CoreELECのイメージファイルをダウンロードします。ここで2つのバージョンについて説明します。1つ目はGitHubで公開されているリリース版、2つ目はNightlyビルドです。Nightlyは最新のソースコードからビルドされているため新機能や修正が含まれる可能性がありますが、安定性は保証されません。(Nightlyについては記事の後半で紹介します)
通常、リリース版は安定版として扱われます。しかしCoreELEC 22.0-Piers_alpha2は名称のとおりα版であり、安定版ではありません。どちらも安定版とは言えない状況であれば、バグ修正が反映されている可能性のある最新Nightlyを選択するという考え方もあります。ただし、新たな不具合が含まれ正常に動作しない可能性もあります。

GitHubのリリースをダウンロードする

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2025年11月から2026年2月時点での最新リリースは22.0-Piers_alpha2です。リリースページの一覧の最上部に表示されている該当バージョンの「Assets」をクリックして展開します。

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CoreELECのサポートデバイスに含まれていない機種の場合は、ファイル名に「Generic」が付いたものを選択してダウンロードします。ファイル名は非常に長く、一見しただけでは判別しにくい点に注意が必要です。本記事で使用しているX88 Pro X5Mは、CoreELECの公式サポートデバイスには含まれていないためGenericを使用します。

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CoreELECはTVボックスの既存OSを置き換えるものではありません。Androidを使いたいときはAndroidを、CoreELECを使いたいときはCoreELECを起動するというデュアルブート運用が可能です。ただし、AndroidからCoreELECへ切り替える際に手間取る場合があります。そこで、Android上からCoreELECへ再起動するための専用アプリをインストールします。なお、CoreELEC側にはeMMCストレージ上のAndroidを起動する終了オプションが用意されているため、Androidへ戻る際に特別なアプリは不要です。
https://github.com/jamal2362/Reboot-to-CoreELEC/releases からReboot_to_CoreELEC_x.0.apkをダウンロードします。2026年2月末時点での最新版はReboot_to_CoreELEC_5.0.apkです。

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購入したX88 Pro X5MにはUSBポートが2つしかありません。その2つはUSB DACとUSBマウス用ドングルで使用しています。常時接続を前提としているため、空きUSBポートはありません。しかし本体にはmicroSDカードスロットが1基用意されています。そこで、CoreELECはmicroSDカードに書き込み、カードスロットから起動する構成にします。写真はUSBドングルタイプのmicroSDカードリーダーアダプタです。microSDカードをアダプタにセットして使用します。

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超小型のUSBドングルタイプmicroSDカードリーダーは、10数年前から多数存在していましたが、当時は比較的高価(1000円以上)でした。しかし2025年頃から価格が大きく下落し、現在では200円台で購入できる製品もあります。

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ダウンロードしたCoreELECのファイルはgzip形式で圧縮されているため、まず解凍します。解凍後の中身は.imgファイルが1つだけです。イメージファイルを書き込むツールは使い慣れたものを使用すれば問題ありませんが、ここではBalenaEtcherを使用しました。microSDカードにイメージファイルを書き込みます。

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イメージファイルの容量は約600MBのため、microSDカードへの書き込みは比較的短時間で完了します。

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書き込み後のmicroSDカードは、他のOSインストール用メディアのようにそのままでは使用できません。カード内には「STORAGE」と「COREELEC」という2つのパーティションが作成されますので、「COREELEC」パーティション側をPCにマウントします。その中に「device_trees」というディレクトリがあるので開きます。

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device_treesディレクトリ内には、さまざまなデバイスツリーイメージファイルが用意されています。事前に確認したファミリー名、SoC名、メモリ容量などをもとに、最適なファイルを選択してコピーします。今回はS7DファミリーのS905X5M SoCで4GBメモリ用のデバイスツリーを選択しました。ただし、このファイルはWi-Fi専用で有線LANが使用できません。有線LANを利用する場合は、1つ上にあるs7d_s905x5m_4g_1gbit.dtbを選択します。このファイルであれば有線LANとWi-Fiの両方が使用可能です。TVボックスのメモリが2GBの場合は、赤枠の1つ下にあるs7d_s905x5m_2g_1gbit.dtbを選択します。

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device_treesディレクトリからCOREELECパーティションのルートディレクトリへ戻り、先ほどコピーしたファイルをペーストします。

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先にダウンロードしたリモコン用の設定ファイルremote.confも、COREELECパーティションのルートディレクトリにペーストします。
ペーストしたデバイスツリーイメージファイル(今回はs7d_s905x5m_4g.dtb)をリネームします。(次) 先にダウンロードしたリモコン用の設定ファイルremote.confもCOREELECパーティションのルートディレクトリにペーストします。
ペーストしたデバイスツリーイメージファイル(今回はs7d_s905x5m_4g.dtb)をリネームします。(次)

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デバイスツリーイメージファイルの名前を「dtb.img」に変更します。作業が完了したら、安全な取り外しを実行してmicroSDカードをアンマウントし、TVボックスのmicroSDカードスロットに挿入します。

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CoreELEC起動後のシステム情報画面です。バージョンは22.0 Piers alpha2で、コンパイル日(ビルド日)は2025年11月10日となっています。

Nightlyビルドのインストール

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CoreELECのNightlyビルドのページです。22.0 PiersバージョンはAmlogic-noのディレクトリ内にあります。

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リリース版ダウンロード時と同様に、
CoreELECのサポートデバイスに含まれていない機種の場合は、「Generic」が付いたファイルを選択してダウンロードします。ファイル名が長いため、対象ファイルを間違えないよう注意してください。X88 Pro X5Mは公式サポート対象外なのでGenericを使用しますが、公式サポートデバイスには専用のファイルが用意されています。

イメージファイルの書き込みは前述のとおりです。

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イメージファイルを書き込んだmicroSDカードのCOREELECパーティションをマウントし、device_treesディレクトリからS7DファミリーのS905X5M SoC用を選択します。4GB版または2GB版を選び、「_1gbit」が付いたファイルは有線LAN対応版です。今回は有線LAN対応のs7d_s905x5m_4g_1gbit.dtbを選択しました。このファイルをコピーします。(次)

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COREELECパーティションのルートディレクトリにペーストします。あわせて、ダウンロード済みのremote.confも同じ場所にコピーします。
ただし、2026年2月26日版のNightlyでは、このremote.confではリモコンが正常に動作しませんでした。

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ルートディレクトリにペーストしたデバイスツリーイメージファイル(s7d_s905x5m_4g_1gbit.dtb)を「dtb.img」にリネームしました。

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CoreELEC起動後のシステム情報画面です。バージョンは22.0 Piersで、Nightlyの2026年2月26日版であることが表示されています。コンパイル日(ビルド日)も同日付になっています。

設定と使用については次回以降です。

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古い車の近代化改修 低グレード車のルーフを静音・断熱施工 後編

古い車の近代化改修 低グレード車のルーフを静音・断熱施工 後編

前編ではルーフ内側のバラシ作業まで行いました。想像以上に手間取りましたが、パーツを破損させることなくルーフライナーを取り外すことができました。今回は、その続きとして制振・遮音・吸音・断熱の施工を行います。

制振材はこれまでと同じものを使用しました。ブチルゴム層とアルミシート層で構成された製品で、サイズは46cm × 5m × 2.3mmのロール状、重量は約10kgあります。耐熱温度は-15℃~130℃という仕様のため、夏場に高温になる車体外板に貼っても、剥がれ落ちる可能性は低そうです。(説明書きの性能が本当であればですが)
アルミシート面には塗装と凹凸模様が施されており、圧着状態を視覚的に確認しやすくなっています。制振効果を最大限に引き出すには、鉄板にしっかり密着させる必要があり、模様が潰れる程度まで強く圧着します。ただし、その分施工後の見た目はあまり良くありません。美観を重視する場合は、表面が平滑なタイプの制振材を選ぶのも一案でしょう。 ブチルゴム面は粘着層になっており、剥離紙を剥がして鉄板に直接貼り付けます。剥離紙は破れやすく、手がゴム成分で汚れることがあるため注意が必要です。また、アルミ層は薄く硬いため、切り出し作業では軍手などを着用して手を保護した方が安全です。
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3M スプレーのり111 430ml S/N 111

参考価格: 192,422 円
販売価格: 2,422 円

(2026年01月20日 の参考価格)
車内のシート類の貼り付けにはスプレーのりが便利です。特にルーフは熱くなるため耐熱温度の高い製品が求められます。3Mの111は耐熱性の高いスプレーのりですが、少し高価です。また、スプレーのりの噴射が液体っぽい状態で飛び散りやすいです。スプレーの出方が綺麗な3Mの99は使いやすいですが、耐熱性と接着力が111に劣ります。

制振・遮音・吸音・断熱の方針

「がとらぼ」の中の人は貧乏でケチセコなので、高価な材料は殆ど使いません。最高の部材で最高の結果を狙うのではなく、安価な部材で(最高ではないにしても)いかに高い効果を得るかのコスパを重視しています。そこでChatGPT、Grok、Geminiを使い、さまざまな材料と施工方法をシミュレートし、最も安価で効果の高い方法を検討しました。
今回は実際にルーフライナーを下ろしてみるまで天井裏の空間がどの程度あるか分からなかったため、施工可能な厚みを数パターン想定して効果を計算しています。なお、AIはネット上の情報を元に回答するため、高価な材料を使う方法を勧めてくることが多く、その点は少し苦労しました。これまでの静音化でフロアに使っていたダイケンの遮音シートの残りがまだだくさんあるのでルーフにも使うつもりでいましたが、AIによるとルーフに遮音シートを使ってもほぼ意味が無いということだったので今回は使用しないことにしました。

古い車の近代化改修 低グレード車のルーフを静音・断熱施工 0
画像は、AIで作成した今回の施工の断面図です。
ルーフ外板の内側には、これまでの施工と同じ制振材を使用し、ルーフリーンフォースメント(ルーフクロスメンバー)がある部分を除いて、できるだけ全面に施工します。車両上部が重くなるデメリットはありますが、制振材を遮熱材としても兼用する狙いです。 制振材は貼り付け面のブチルゴムだけでなく、反対側にアルミシートがあり、熱反射層としても機能します。そのため、部分的に制振材を貼るだけでは断熱効果が十分に得られません。
うちの車では、ルーフリーンフォースメントの厚みが約1cm、その下のルーフライナーまでの隙間も約1cmで、合計2cm程度しか空間がありません。このため、断熱材や吸音材に厚みを偏らせても十分な効果が出ない可能性があります。そこで、空気層を積極的に活用する方法を採用しました。
制振材から内側にルーフリーンフォースメントの厚み分だけ空気層を確保し、熱の対流、音波の散乱・減衰、湿気(結露)対策を兼ねます。その下側には、空気層を潰さないための蓋として、ダンボール(実際にはプラダン)をルーフリーンフォースメントの車内側に設置します。プラダン自体も中空構造(薄い空気層)のため、わずかながら低周波の減衰効果も期待できます。
スポンジ系の断熱材は使用せず、非常に薄いアルミシートをプラダンの内側に貼り、赤外線(熱)の反射を狙います。その内側には吸音材として約1cm厚のニードルフェルトを施工します。実際には、ニードルフェルトはルーフ側ではなくルーフライナーの裏(上側)に接着します。ニードルフェルトは高性能な吸音材とは言えませんが、音波の拡散と反響音の減衰・吸収には十分な効果があります。
プロの方でも吸音材の効果について正しく理解していないのか遮音材と混同しているのか吸音材に効果がないと説明していることがありますが、直接的な強い音を弱める(遮音)効果は低くても響きを減衰させる吸音としては効果があります。
予算に余裕があれば、シンサレートのようなポリプロピレン系断熱吸音材の使用が効果が高そうですが、その場合は材料を潰さないだけの空間が必要です。また、天井裏に3cm以上の余裕があるなら、ダンボールとアルミシートの代わりにGSメタルシートのような両面アルミの特殊断熱材を使う方が効果的でしょう。この特殊断熱材は上側に空気層、下側に吸音材を配置することで性能を発揮します。これらを使用できる空間の余裕がなければ期待通りの性能を得られない可能性があります。
さらに天井裏の隙間が5cm程度あれば、閉細胞フォームの使用も検討できます。吸音効果は控えめですが、価格の割に断熱性能が高い素材です。
なお、グラスウールやロックウール系の断熱吸音材は、「がとらぼ」では最初から選定候補に入れていません。(チクチクするのと細かく硬い繊維ホコリがでるので)
材料費は、制振材は1ロール使用し5千円弱と最も高価ですが、プラダンは1枚200円以下、アルミシートは110円、ニードルフェルトは約1m×2.5mで2千円台です。すべて合わせても1万円かかりません。なお、耐熱温度の高い強力なスプレーのりが別途必要です。

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うちの車では、天井にルーフリーンフォースメントが5本通っていました。これらはネジなどで簡単に取り外せる構造ではなく、ルーフパネルと接着されており、ある程度振動を抑える役割を果たしています。
ルーフリーンフォースメントとルーフパネルが接触していない車種では、ルーフを叩くと大きく長く響くことがありますが、うちの車では静音未施工のドアの外板と同程度の響きでした。(それなりには響きます)

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ルーフリーンフォースメントは数か所でルーフパネルと接着されており、さらに数か所に穴が空いていました。この穴がクリップ固定に使えそうだったため、当初予定していたテープ固定ではなく、急遽クリップで部材を固定する方法に変更しました。これにより、施工後の材料落下を確実に防げそうです。

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フロントガラスとルーフの境目です。二重天井構造ですが内部は閉じています。サンバイザー固定用などの穴や後部方向に向けた隙間はあるものの、制振材を貼れるほど大きな開口部はありませんでした。この部分のルーフパネルへの制振材施工は断念しました。

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側面には前席・後席用のカーテンエアバッグがあり、ルーフとの境部分には鉄板の突起が露出しています。この突起はアルミシートを貼る際の固定ポイントとして利用できそうです。

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天井中央のルームランプ取り付け金具です。うちの車では、この部分が天井裏の空間が最も薄い箇所になります。

制振材の施工

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ルーフパネル内側をシリコンオフでしっかり脱脂します。ルーフは特に脱脂が重要で、不十分だと重い制振シートが夏場の高温で剥がれ落ちる可能性があります。耐熱温度が100度未満の制振シートは、ルーフには使用するべきではないので、耐熱性能を調べて購入してください。

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ルーフリーンフォースメントがある部分には制振シートを貼れませんが、それ以外の部分には可能な限り隙間なく、ルーフ全面に制振シートを貼っていきます。ルーフパネルに制振シートを圧着する際に先が丸いものや硬いローラーを強い力で使用すると強く押された先端やローラーの角でルーフパネルに歪みや変形が発生することがあるようです。斜めから光が当たったときに外板の変形や歪みが見えてしまうそうなのでご注意ください。

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ルームランプの下あたりから後方を撮影しています。フロント側と同様に、ルーフパネルには可能な限り全面に制振シートを施工しました。

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ルームランプ周辺です。ルーフリーンフォースメントから飛び出している金属板の下にも、できる限り制振シートを貼っています。

空気層の施工

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ルーフリーンフォースメントの車内側に、切断せずそのままのプラダンを置き、ルーフリーンフォースメントの穴を利用してクリップで固定しました。また、クリップ留めだけでは走行時の振動でプラダンがバタつく可能性があるため、プラダンの四隅とルーフリーンフォースメントと接する端はカーペット用強力両面テープで固定しました。

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プラダンは1800x900mmの1枚だけを無加工で使用したのでサイドの端までは貼っていませんが、前後はルーフクロスメンバーに引っかける形で載せています。切断せずとも、まるで測ったかのようにぴったりの長さでした。これでメインの1cm厚の空気層とサブの空気層ができました。

熱反射層の施工

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プラダンの車内側には、100円ショップで購入した防寒用アルミシート(災害時に体を包むタイプ)を貼りました。アルミシートはプラダン側に耐熱スプレーのりを吹いて接着しています。写真はリア側です。

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同様に、プラダンに貼ったアルミシートです。写真はフロント側です。

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同様に、プラダンに貼ったアルミシートです。写真は右サイドです。アルミシートのサイドエッジは、カーテンエアバッグ展開の妨げにならないよう、エアバッグより上側で固定しています。カーテンエアバッグ上部には金属プレートが露出しているため、その上にカーペット用両面テープを貼り、アルミシートのエッジを固定しました。

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使用したスプレーのりは3Mの111です。スプレーのりの中では耐熱温度が高く接着力も強力ですが、姉妹品の99と比べると噴射状態が悪く、施工性はあまり良くありません。また、3Mの多用途耐熱ガムテープは、今回施工した天井にケーブル類を固定するために使用します。(次)

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純正ではルーフライナー裏側(上側)にテープでケーブル類が固定されていましたが、今後ルーフライナーを再度外す可能性を考えると、ライナー側に固定するのは作業の妨げになります。そこで、施工した天井側に多用途耐熱ガムテープを使ってケーブルを固定しました。

ルーフライナーへの吸音材施工

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純正のルーフライナー裏側(上側)には、断熱吸音材が3か所だけ貼られていました。写真で白く見える部分です。これらはルーフリーンフォースメントが無い部分に嵌まり、ルーフパネルと接触する構造になっていたようで、振動を抑える役割があったと思われます。一方で、ルーフライナーとルーフパネルの間には、これ以外の断熱吸音材は一切ありませんでした。夏に暑く冬に寒く走行中に車内に音が響くのも納得です。
この断熱吸音材はシンサレートかと思いましたが、知っているシンサレートより繊維がやや硬く、少しチクチクするため、別素材かもしれません。

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純正の断熱吸音材を剥がしました。ルーフライナーには接着剤で固定されていたため、わずかに繊維が残りました。

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ニードルフェルト施工前に、ルーフライナーを車内へ戻します。ルーフライナーは、斜めに倒した座席のヘッドレストで支えた状態です。

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ドアを開け、ルーフライナー裏側(上側)にスプレーのりを吹き、少し待ちます。同様にニードルフェルト側にもスプレーのりを吹き、少し置いてから接着します。中央のルームランプ周辺は広めに切り取ります。狭く切り抜くと、ルームランプ固定に支障が出る可能性があります。
サイドのエッジ付近は、カーテンエアバッグの動作に影響が出ないよう、ニードルフェルトを貼っていません。他の素材でも同様にしたと思います。ただし、写真のニードルフェルトのエッジ部分は天井裏でも最も空間がある箇所なので、ここだけ多層にする方法も考えられそうです。
写真のニードルフェルトは安価である分低品質なのか繊維埃が大量に出て掃除に苦労しました。高価でも1cm厚のシンサレートを使用した方が良かったかもしれません。

古い車の近代化改修 低グレード車のルーフを静音・断熱施工 57
写真の右側がフロントです。サンバイザー取り付け穴は塞がないようにし、マップランプ部分は広めに切り取っています。写真撮影後、サンバイザー固定に支障があったため、角を少し切り取りました。

施工後の戻し

古い車の近代化改修 低グレード車のルーフを静音・断熱施工 58
ルーフライナーは後席カーテンエアバッグの上のひっかけ部分を最初に取り付けると1人でも楽に作業できます。
ルーフライナーと各パーツの取り付けで、最も苦労したのがサンバイザーの固定です。サンバイザーの固定部を写真の状態まで組み立て、天井側の穴に差し込んだ後、C型カバーを後から嵌めてロックする方法が最も確実でした。金具のロックにはかなり力が必要です。さらに、C型カバーの閂が完全に嵌るまでは油断すると、せっかくロックした金具が天井側に抜けてやり直しになるため注意が必要です。

古い車の近代化改修 低グレード車のルーフを静音・断熱施工 59
アシストグリップは、カバーを含めて完全に組み立てた状態で、ルーフライナーと固定部の穴位置が合っていることを確認し、そのまま押し込むだけです。しっかり押し込めば金具が固定されて抜けなくなりますが、中途半端だとアシストグリップを掴んだ際に脱落して危険です。

古い車の近代化改修 低グレード車のルーフを静音・断熱施工 60
マップランプとルームランプは比較的簡単に固定できます。A/B/Cピラーの内張りを戻し、ラゲッジエリアのパネルも元に戻します。

古い車の近代化改修 低グレード車のルーフを静音・断熱施工 61
リアハッチ付近のクリップ3か所を差し込めば、ルーフライナーの固定は完了です。

古い車の近代化改修 低グレード車のルーフを静音・断熱施工 62
Bピラー上部はスペースが狭く、ルーフライナー固定時にシワが寄って焦りました。天井中央のルームランプ周辺もルーフライナーに少しシワが発生しました。しかし、元に戻して2〜3時間経つとシワは自然に消えていました。強く折り曲げない限り、多少のシワは気にしなくて良さそうです。

施工後に、一般道・高速道路・雨の中を走行してみました。すでに他の静音化でかなり静かになっていましたが、走行中に耳障りだった一部の音が、実はルーフから伝わっていたことを初めて実感しました。その音が抑えられ、さらに静粛性が向上しました。ルーフは耳に近いため、鉄板の響きが直接伝わりやすかったのでしょう。
また、雨が降った際にルーフに当たるカンカン、パラパラという音もほぼ消え、フロントガラスに当たる雨音だけが聞こえる状態になりました。雨音に関しては、予想以上の効果です。
現在は非常に寒い時期のため、断熱効果として「車内が施工前より暖かい」と感じることを期待していましたが、正直あまり感じられませんでした。冷気は天井からよりも窓から伝わるからかもしれません。夏の暑い日に効果を実感できることを楽しみにしています。

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